太陽の恵みが何よりの栄養~ハサマ共同製茶組合のお茶への思い~

インタビュー

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インタビュイー プロフィール

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ハサマ共同製茶組合 山中 千佳さん

実家は茶業、産まれた頃からお茶は身近な存在だった。物心ついた時から自然と茶業のお手伝いをし、他社へ就職したのちも休みの日には茶畑仕事をサポート。2011年ころから本格的に茶業に参加。現在は茶業のほか、お茶摘み体験などの開催、自家製野菜の販売なども行う。

「太陽の光を浴びたら、元気にすくすくと育っていく。それはお茶も野菜も人も同じですね。」

四日市市川島町狭間(はさま)地区内で茶業を営むハサマ共同製茶組合。1990年に4軒の茶農家が集まり、共同工場としてスタートした。高齢化などに伴い、現在はその中の1軒だった山中さん一家が工場を運営している。

プリンタイムでは、ハサマ共同製茶組合でつくられた紅茶を使った『和紅茶アップル』を販売している。今回は山中千佳さんに、茶業について、紅茶について話を伺った。





狭間(はさま)地区で生まれた「Kyoukan茶」

煎茶工場。摘み取った生葉は約4時間かけて加工される。

四日市市の市街地を抜けると、それほど時間を置かずして、緑の樹々に囲まれた田園・茶畑風景が見えてくる。ハサマ共同製茶組合の製茶工場付近には、少し小高いところや平地などに茶畑が点在する。

ハサマ共同製茶組合では、メインの煎茶は大手メーカーへ出荷するものも多いが、独自ブランド「Kyoukan茶」として煎茶・紅茶・ほうじ茶などを販売。おいしいお茶を飲んでいただいた方と「共感」したい思いに加え、狭間地区の「はさま」を「きょうかん」と別読みして名付けられた。

煎茶の摘み取り時期は年間2回、4月20日頃から5月15日頃までの一番茶と、6月10日頃から末日頃までの二番茶だ。主な工程は、摘み取ってきた生葉をコンテナに入れ、蒸したのちに冷やし、揉みながら乾かす作業を繰り返す。最後十分に乾かしてできあがったのが「荒茶(あらちゃ)」と呼ばれるお茶だ。

「単一品種でできたタイプのものは『シングルオリジン』といいます。この荒茶もまさに『シングルオリジン』。まじりっけなし、100%ハサマ共同製茶組合で生まれたオリジナルのお茶です。」

偶然から生まれた、紅茶との出会い

2015年以降に受賞した、錚々たる賞状の数々。手前は茶葉をしおらせる際に入れるコンテナ『萎凋(いちょう)槽)』。

お茶は、製法などによって緑茶、ウーロン茶、紅茶などの種類に分類される。ハサマ共同制者組合では2014年から紅茶も加工・販売しているが、紅茶をつくりはじめたのは偶然の出来事だった。

「一時期、『べにふうき』という紅茶の品種を煎茶にすると、花粉症にいいと話題になったことがあって。そこでべにふうきを植えて煎茶をつくってみたんですね。けれど渋くてなかなか販売につながらず、紅茶づくりに転換したんです。」

そこからはトントン拍子に進んだ。ある試飲会でコンテスト主催者と出会い「美味しいから出品してみたら?」と言われて国産紅茶グランプリに出品したところ、いきなりの銀賞受賞。2017年にはプレミアムティーコンテストでチャンピオンを獲得し、その後も各賞を受賞するなど品質の確かさは折り紙つきだ。

紅茶の加工工程は大きく4つ。まずは生葉を萎凋(いちょう)槽にいれて一晩しおらせ、生葉が約65%程度にまでしおれたら、揉捻(じゅうねん)機で葉をもみ、発酵用の箱に入れて酸化発酵。その後乾燥機で100度まで上げて5~10分したら、徐々に60度程度に下げ、水分量が5%程度になるまで乾燥させる。

それぞれの工程にかかる時間は、気候などによって微妙に変わる。

「触ったときの手の感覚や見た目、におい、バランスなどで次の工程に移るタイミングを見極めます。例えば葉のしおれ具合一つとっても、日によって微妙に違う。どの作業も見極め時は本当に難しいですね。」

より良い品質を求め…紅茶工房でじっくりと加工

紅茶工房。奥にあるのが揉捻(じゅうねん)機。

煎茶も紅茶も同じ茶畑から摘み取った茶葉でできているのか、といえばそうではない。

「煎茶、ほうじ茶は同じですが、紅茶は茶畑の作り方自体が違うんです。肥料分や農薬関係も全く異なるし、それぞれ専用の茶畑があります。それに紅茶の場合は春2回、夏2回、秋1回摘み取っています。」

刈刃を調整し、葉の上の部分だけを手摘みレベルで摘み取るという繊細さも、量より質を重視しているからこそ。元々煎茶工場で紅茶も加工していたが、クオリティ維持のために今では専用の紅茶工房でじっくりと紅茶づくりに向き合う。

煎茶の場合、一番茶が最も高品質とされ、高値で売られるのが一般的だ。けれど紅茶の場合、各産地によって、品質の良い茶葉がとれる時期「クオリティーシーズン」がある。例えば「ファーストフラッシュ(春摘み)」「セカンドフラッシュ(夏摘み)」「オータムナル(秋摘み)」などと呼ばれる。

「紅茶の場合、どの時期が一番ということではなく、それぞれに美味しさがあって。春がいい人もいれば夏がいい人もいる。それぞれ飲む方がお好みの時期の紅茶を選ばれるんですよ。」

お茶のファンが増える喜び。オリジナルのお茶づくりを極めたい

太陽の光を浴び、すくすく成長中の新芽。摘み取りの時期を待っている。

摘み取りの時期。山中さんは早朝から深夜まで、摘み取り、工場の作業、梱包や出荷準備、掃除片付けなどに追われる。繁忙期を過ぎたら、終日草刈りや野菜のお世話。山中さんの生活は、農・自然と切っても切り離せない。

例年夏や秋ごろには、紅茶の手作り&茶摘み体験会を開催する。茶摘み体験からお茶の手もみ、自家製のお米や野菜を使ったお昼ご飯を食べたら工場見学、お茶づくりと盛りだくさんの内容だ。

「どうやってお茶を作っているのかを皆さんに見て知ってもらいたいですし、ファンになっていただけることが何より嬉しいですね。それに、皆さん同じお茶で作るのに最後は味がそれぞれ違う。『どうしたらこういう味になるのか』といった視点で、私自身も紅茶の奥深さを楽しく見させていただいています。」

販売会などで直接お客様に販売して喜ばれたとき、メールやはがきなどでメッセージをいただいたとき、大きなやりがいを感じるという。今後は作るお茶の品種や種類を増やしていきたいと山中さんは意気込む。

「本当にいいお茶って、何の種類かわからないんですよ。紅茶?それともウーロン茶?って。私も、種類にとらわれない、オリジナルのお茶を極めてみたい。いろんな作り方を試しながら、チャレンジしていきたいです。」

(取材/ライティング:杉本友美)



キャラメリゼしたリンゴといただく、上品な和紅茶プリン

和紅茶アップル

400円(税込)

自然豊かな地で大切に育てられたべにふうき茶葉を使用した和紅茶のプリンです。甘くやわらかな風味の和紅茶プリンは、さっぱりとした味わいの中にも深みがあり、鼻に抜ける香りも豊かです。底には紅茶との相性が良いキャラメリゼしたリンゴを敷きました。バターの風味も手伝って、とてもリッチな味わいに仕上がりました。

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