インタビュイー プロフィール
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株式会社富士珈琲 代表取締役 珈琲焙煎士 阿竹 実さん
津市にある富士珈琲は1968年に初代社長が創業、実さんは2006年に父から社長職を引き継いだ。ブラジル・コロンビア・グアテマラ・アフリカ諸国などから珈琲豆を輸入、焙煎、販売している。この他、焙煎機貸し出しや喫茶材料卸売、お客様店舗への経営サポートなども行っている。
「こんなに面白い仕事はないなって思ってるんです。創業した親にも感謝していますね。」
まわりからは「10年以上前から知っている人みたいに話すよね」と言われる阿竹さん。取材当日も、まるで旧知の間柄のような話しぶりに、つい話が脱線することもしばしば。人見知りゼロなのが特技なのだそう。「10分くらい話して『あんた面白いな』って言ってもらえたら、懐に入れたら今後の営業に繋がるなと。」
プリンタイムの『白いコーヒー』 は、富士珈琲で扱う珈琲豆から抽出したエキスを使っている。今回は阿竹さんに、富士珈琲について、珈琲豆について話を伺った。
珈琲焙煎士としては18年目になるという阿竹さん。富士珈琲入社当時は、自分ではない別の人が焙煎したコーヒーを販売していたという。
その当時、景気は徐々に悪化傾向にあった。阿竹さんは焙煎士の資格を取り、産地に出向いて豆を厳選するなど他社との差別化を図る。現在は社長自らが焙煎士の目線で豆を選び、焙煎し、販売。これが富士珈琲の大きな強みになっている。
「『産地に行ってカップテストもやって、自分で選んだ豆を焙煎して販売しています』と言ったらどうでしょうか?焙煎士になったのは、『珈琲は阿竹に任せたら大丈夫』と思ってもらいたい気持ちもあったから。」
例えば、阿竹さん自らが赴いたブラジルのイパネマ農園の珈琲。「ドルチェ」は阿竹さん自らが現地でカップテストを行い選んだ珈琲豆だという。その他では、グアテマラの「アンティグア カペウ」。限られた産地で栽培された貴重な珈琲豆なのだそう。
これまで購入していた生豆の値段が上がったり、生育状況が悪くて輸入されなかったりしたとき、商社の意見よりも阿竹さん自身が真剣に考えたうえで豆を選ぶ。焙煎士であるからこそ、相手に伝わる熱意も違ってくる。
富士珈琲は卸であり営業であり、一般的な自家焙煎の店とは一線を画す。ホテル・観光施設・大手企業から飲食店まで、500社ほどのお客様をフォロー。珈琲の販売から味合わせ、コーヒーマシンの貸し出し、フィルターやジュースなども卸す。
「今はコロナ禍や為替の高騰で原料価格も上がり、珈琲業界も大変苦しいのが実情です。ただ、珈琲とお客様を大事にしている。お客様が困っていたらどんな時も助けにいきますよ。それが僕らの仕事。売りっぱなしで終わるのは嫌だし、大局的な目で見ています。」
お客様のお店ではどんな珈琲が合うのか、味合わせにも真正面から向き合う。
珈琲と言っても、挽き目も煎り方も抽出方法も水も違う。星の数ほど珈琲の味はあると言われる中、その店に来るお客様にどんな珈琲を提供するといいか。まず店に行き、料理を食べ、その料理やスイーツに合う珈琲を提示するのが阿竹さんのやり方である。
阿竹さんは普段はほとんど会社におらず、もっぱらお客様まわりの日々。ただ、お客様にしろ仕入先にしろ、お互いがフラットな関係でいられることが大切だという。
「お互いに言いたいことが言える関係がいいなと思っています。例えばうちは配達に来てくれた運送業者さん向けに、ペットボトル飲料を用意しています。『いつもありがとう』という気持ちで。お互いの関係をどのタイミングで築けるかが大切やなと。」
仕事を通じてやりがいを感じる瞬間は「富士珈琲にしてよかった」といわれたとき。そのためにも、日々の小さな困りごとも細やかに対応する。ただすべてに対してイエスではなく、お客様に対しても必要な時はダメという勇気を持つ。
「はじめはお客様とうまくかみ合わなくても、がっぷり四つに組んで一緒にやっていく。お互いに何度も我慢しながらやり合ううち、ピントが合ってくる。そこで「あんたにしてよかったわ」って言われたら最高に嬉しいですね。」
阿竹さんが珈琲豆を焙煎するのは、電話があまりかかってこない日曜日。ガスバーナーが48本立つ中で、焙煎機と一人、真剣に向き合う。
「1日で大体生豆700キロ、約7万杯分を焙煎。1カ月で約3トンの珈琲を販売しています。特に夏場は暑くて大変。扇風機をかけてたくさん水を飲み、熱中症対策をしています。」
阿竹さんが厳選した生豆は、富士珈機製焙煎機「FUJI ROYAL」を使用してじっくりと焙煎。一度で30キロもの生豆を焙煎できるそうだ。重要なのは焙煎を終わらせるタイミングだという。ベストなタイミングで焙煎し、袋詰めまで気を抜かず徹底して行う。
阿竹さんの楽しみは、自分で選んだ豆を自分で選んで焙煎して、得意先でその珈琲を飲めることだ。
「お客さんのところで珈琲を飲んで「うまいですね」って言うと「あんたが焼いた珈琲やで」って言われるんです。でも、珈琲って100点のうち、僕らは50点しかやっていない。残りの50点はお店の愛情や抽出方法、いろんなものの組み合わせでできているんです。」
一貫して珈琲について楽しそうに語る阿竹さんの趣味はお店巡り、仕事にも直結している。「飲食店に限らず、いろんなお店を見て回るのが大好きです。ポップのつけ方や売り方とか。ただ安くするだけでなく、お客様にお買い得感を持たせるにはどういうキャッチをするのか。接客の様子とか。富士珈琲の商品のパッケージデザインを考えるヒントにもしていますね」。
これまでに飲んだ一番印象的な珈琲は、京都にある老舗珈琲店だと教えてくれた。
「珈琲の味以上に、雰囲気が他店とは全く違う。何かモヤモヤしているときにそこで珈琲を飲むと『そうか』って。珈琲って微妙に味の誤差が出るんですが、そのお店では2杯分たてて1杯分は捨てる。誤差が出てしまうから。それこそがプロの仕事やなと。」
阿竹さんは富士珈琲の「もっと美味しい」のために、前進し続ける。
(取材/ライティング:杉本友美)
380円(税込)
白い見た目からはちょっと想像できないコーヒーフレーバーのプリンです。ミルクの味わいと共に鼻に抜けるコーヒーの香りを感じていただけます。コーヒー焙煎士が焙煎する新鮮な豆を使用。独自の抽出法でミルクに溶け込む豊かなコーヒー味を実現しました。
440円(税込)
カカオとコーヒー両方が主役。キリっとした苦みのあるコーヒーが後味となり、重くなりがちなチョコレートをスッキリと締めます。苦みがとがり過ぎない ようトップのクリームで全体をマイルドにまとめました。厳選した材料で贅沢に、ちょっと大人味に仕上げました。
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高知県安芸市にある安芸川周辺で、土佐文旦(柑橘類の一種)や柚子をはじめ、何十種類もの柑橘類を栽培している。実家は元々祖父の代から続く柑橘類栽培の農家であり、31歳の時に農園を継ぐことを選んだ。当初は文旦とみかん、少しの柚子だったが、現在は文旦と柚子を主とし、継いだ当初の約3倍の面積でさまざまな柑橘類の栽培に尽力する。
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兵庫県出身、趣味のサーフィンが縁で御浜町にやってきた。農業資材関係の仕事に就き肥料や農薬、農業機械などの知見を得たのち、マイヤーレモン農家として歩み始める。たかみ農園では自ら2ヘクタール、知人などが栽培する5ヘクタールの合計7ヘクタールの販売を管理。年間130~140トンものマイヤーレモンを出荷する。その量、なんと三重県ナンバーワン。