目指すは七種の農業。抹茶からはじまる「鈴鹿の七樹」の歩み

インタビュー

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インタビュイー プロフィール

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株式会社鈴鹿の七樹 取締役 水野純志さん

鈴鹿の七樹(ななき)は代表の山口さん、取締役の伊藤さんと水野さんの3人で2018年に立ち上げた。三重県鈴鹿市で碾茶の栽培、摘み取り、茶葉の加工を行っている。この他には多肉植物のセダム、マスカット(シャインマスカット・クイーンニーナ)を栽培。実家は同じく鈴鹿市の「まる仁製茶」で、煎茶やかぶせ茶など急須で飲むお茶を加工している。

「急須でお茶を飲む機会が減っている。お茶文化を守るためにできることはないか」

茶業を営む中で見えた課題。2018年に生まれた鈴鹿の七樹が目をつけたのは碾茶(抹茶の原料)だった。近年抹茶の需要が増えている、抹茶は茶殻が残らないから現代の生活にも適しているのでは…。そんな思いもあり、鈴鹿の七樹は「碾茶栽培」から始動したのだった。



鈴鹿の七樹とは

三重県鈴鹿市を中心に碾茶を栽培している鈴鹿の七樹。「七樹」の由来にはいくつかの思いが込められているという。

「鈴鹿のセブンマウンテン(藤原岳、竜ヶ岳、釈迦ヶ岳、御在所岳、雨乞岳、鎌ヶ岳、入道ヶ岳)の「七」であり、また、「七」つの樹になるものを農業としてやっていきたいとの思いから「鈴鹿の七樹」と名付けました。今は碾茶、セダム、マスカット。これからその数を増やしていくつもりです。」

三重県と製茶産業

工場内は清潔に保たれ、摘み取られた茶葉を乗せたトラックを待ち構える。

実は三重県、お茶の生産量全国3位なのをご存じだろうか。なんと、かぶせ茶に至っては全国1位を誇る。その理由を尋ねてみた。

「寒暖差があるのは大きいでしょうね。冬は程よく寒く、夏は暑い。実は鈴鹿のお茶栽培は1000年以上もの歴史があるんですよ。」

鈴鹿でいうと、お茶には一番茶、二番茶、秋番茶がある。一番茶の摘み取り時期は例年4月中に決定する。天候や生育具合から、その時期が微妙に変わるのだ。

「一番茶の摘み取り時期は大体5月はじめから末まで。二番茶は6月20日過ぎから7月20日くらい。秋番茶は10月頭から末まで。年間で一番美味しいのはやっぱり一番茶やね。秋番茶を摘み終えてから茶葉は休眠期間に入る、その間にタンニンなどの養分がしっかりとため込まれるから。」

摘み取りのタイミングはまさに天候とのにらめっこだ。特に二番茶は梅雨の時期と被る。天候は、誰にも変えられない。晴れた日には、そのチャンスを逃さず一気に摘み取る。

お茶はどのように加工されるのか

蒸室。蒸気ボイラーで作られた蒸気を茶葉にあて、散茶工程へ。

碾茶の加工工程は大きく4つに分けられる。畑から摘み取ってきた茶葉を保管する生葉管理室、生葉コンテナから蒸気をあてる蒸室へ、そして散茶を経て3段のレンガ積碾茶炉にて下段温度200度で乾燥させていく碾茶炉を経て風力選別機で葉と茎に分けられ、乾燥機で本乾燥させて碾茶ができあがる。一連の流れは約1時間で終わるというから驚きだ。

碾茶炉室。レンガ積碾茶炉内は3段構造。茶葉を乾燥させながら下段から上段へ風送で送られる。

碾茶を粉末にした抹茶は、飲むことでそのすべてを体内に取り込む。だからこそ衛生管理を徹底している。工場内は非常に清潔に管理されていて、ほとんど人の手を介さない状態で碾茶が加工される仕組みだ 。

碾茶から加工され、「鈴鹿の七樹」の抹茶に。

「お茶って、実はどのお茶も全部同じ茶葉からできているんですよ。例えば緑のお茶は不発酵茶で、ウーロン茶は半発酵茶、紅茶は発酵茶。緑のお茶でいうと、玉露、かぶせ茶、煎茶、番茶は製造過程で茶葉を揉むけれど、抹茶は乾燥させた碾茶を石臼で引いて粉にする。被覆日数もそれぞれ微妙に違う。加工の仕方で味が変わるって、面白いですよね。」


プリンタイムの『抹茶』は、鈴鹿の七樹さんの碾茶からできた抹茶を使用している。


「甘さ控えめで、優しいくちどけ。程よく抹茶の味がきいていて食べやすいですね」

100点満点の茶葉を目指して。「肥料」と「被覆(ひふく)」がキモ

お茶への思いを語る水野さん。

衛生的な加工はもちろんだが、畑の管理も重要だと水野さんは語る。

「工場での加工作業も大切ですが、やはり畑から持ってくるのものがすべて。例えば茶葉が100点満点なら、その100点をいかにそのままの状態で製品に作り上げるのか。茶葉の質で製品が決まるわけです。日々の畑の管理、肥料と被覆(茶葉に遮断資材を被せる)には特に細心の注意を払っていますね。」

肥料はオーダーメイドのものを使い、被覆は一番、茶葉が良い状態のタイミングを見計らい被せるという。被せる期間は大体16~20日くらい。メンバーと話しながら被せる、外す時期を決めるそうだ。

鈴鹿の七樹が目指す先

一番茶の摘み取り時期を待ちながら、すくすく伸びる茶畑の葉っぱたち。

摘み取り期間中はほぼ工場にいるという水野さん。それ以外の期間は畑の管理で肥料や消毒、お茶の樹と樹の間を刈り取るなど、年間を通してやることは盛りだくさんだ。

「日々やることはたくさんありますが、やっぱり自分たちがつくった製品を『香りがいい』『美味しい』といっていただけるのはおおきなやりがいですよね。現状では碾茶の多くをそのまま出荷している状況ですが、その一部を抹茶にして工場に置いていて、気に入った方に購入していただいています。ゆくゆくは抹茶製品の開発にも取り組み、みなさんにもその製品を知っていただきたい。鈴鹿の七樹の製品としてさらなるブランディングを考えています。」

代表の山口さんに「誠実」だと評される水野さん。これまでお茶の栽培、製造に携わってきたが、今後はブランディングや販売など営業活動にも積極的に取り組んでいく予定だ。人懐っこい笑顔と熱いまなざしで、「七樹」の実現を目指す。



(取材/ライティング:杉本友美)



鈴鹿山脈の伏流水で育った茶葉のうまみを味わう

抹茶

370円(税込)

お茶どころの鈴鹿でたっぷりの愛情を受けて育てられた茶葉を贅沢に使用した素材の美味しさが光るプリンです。抹茶風味のデザートにこれまで満足しなかった方に「おいしい!」と言っていただけるフレーバー作りを目指しました。鈴鹿抹茶の旨味をぜひご堪能下さい。

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